小説『鎌倉擾乱』
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四方を山と海で囲まれた鎌倉に、東夷が築き上げた幕府、その血塗られた歴史を描くー。
若くして将軍職に就いた頼家の不幸「非命に斃る」。臆病なるが故に、権力の中枢に登りつめた平頼綱の執念「異形の寵児」。死の直前まで天命を知ることのなかった男「北条高時の最期」の三編。第五回中山義秀文学賞受賞作。
高橋氏の出世作であると同時に、代表作でもある作品です。
日本史の中ではややマイナー気味な鎌倉時代を取り上げてる点がまず異色。その上、二代将軍・源頼家、霜月騒動の首謀者・平頼綱、最後の得宗(北条氏本家の嫡系)・北条高時といった悪役イメージの強い人物たちを人間的に肉付けし、彼らが破滅に向かう様を迫力ある筆致で描いており、大変読み応えのある物語ですごく満足しました。
とりわけ印象的なのは、三作中最も長い話で、なおかつこれ単独で直木賞の候補にも上った「異形の寵児」。
臆病者で見た目も貧弱な三郎こと平頼綱が、時の有力御家人・安達泰盛に才能を見いだされ出世し、やがて恩人の泰盛にも刃を向けて権力を掌握。我が世の春を謳歌するがそれは長くは続かず…といった話。
外見も性格も弱々しく人に蔑まれて育った三郎ですが、邪魔者はすべて誅する凄まじいやり方で頂点に登りつめます。しかしそれは彼が強くなったわけでなくむしろ臆病者のままであり、周りの人間を信用してなかったからこその結果でした。権力者となってから恐怖政治を敷いたのもその裏返しで。
また三郎が、長男や下人の男にことさら辛く当たるのは、まるで自分の冴えなかった幼年時代を許せないかの如くです。結局人を愛したり、また愛されるという事を知らないから、トラウマも克服できなかったのでしょう。一時は権力を手中にしたとしても、とても寂しい人間ですね。
他二編の主人公は、若くして幕府のトップの位についた事、にも関わらず非業の最期を余儀なくされた事、暗愚な君主に見られがちな事など、共通点が多い気がしました。そして二人とも、己の使命にもっと早く気付いていれば…という歯痒さが感じられます。
父・頼朝といちいち比べられる苛立ちから、乱暴で我がままに振る舞う頼家。得宗家の威厳を取り戻そうと努力するもうまくいかず、ヤケを起こして遊びに溺れる高時。彼らがやっと「自分の立場と成すべき事」を認識した時は、もはや後戻りはできなくなっていたのです。
どちらも悲劇ですが、祖父と叔父の陰謀により命を絶たれ、最期を看取ったのはたった一人の下僕だけだった頼家よりも、800人の家臣と共に死んでいった高時の方がまだ幸せなのかな…?
日本史の中ではややマイナー気味な鎌倉時代を取り上げてる点がまず異色。その上、二代将軍・源頼家、霜月騒動の首謀者・平頼綱、最後の得宗(北条氏本家の嫡系)・北条高時といった悪役イメージの強い人物たちを人間的に肉付けし、彼らが破滅に向かう様を迫力ある筆致で描いており、大変読み応えのある物語ですごく満足しました。
とりわけ印象的なのは、三作中最も長い話で、なおかつこれ単独で直木賞の候補にも上った「異形の寵児」。
臆病者で見た目も貧弱な三郎こと平頼綱が、時の有力御家人・安達泰盛に才能を見いだされ出世し、やがて恩人の泰盛にも刃を向けて権力を掌握。我が世の春を謳歌するがそれは長くは続かず…といった話。
外見も性格も弱々しく人に蔑まれて育った三郎ですが、邪魔者はすべて誅する凄まじいやり方で頂点に登りつめます。しかしそれは彼が強くなったわけでなくむしろ臆病者のままであり、周りの人間を信用してなかったからこその結果でした。権力者となってから恐怖政治を敷いたのもその裏返しで。
また三郎が、長男や下人の男にことさら辛く当たるのは、まるで自分の冴えなかった幼年時代を許せないかの如くです。結局人を愛したり、また愛されるという事を知らないから、トラウマも克服できなかったのでしょう。一時は権力を手中にしたとしても、とても寂しい人間ですね。
他二編の主人公は、若くして幕府のトップの位についた事、にも関わらず非業の最期を余儀なくされた事、暗愚な君主に見られがちな事など、共通点が多い気がしました。そして二人とも、己の使命にもっと早く気付いていれば…という歯痒さが感じられます。
父・頼朝といちいち比べられる苛立ちから、乱暴で我がままに振る舞う頼家。得宗家の威厳を取り戻そうと努力するもうまくいかず、ヤケを起こして遊びに溺れる高時。彼らがやっと「自分の立場と成すべき事」を認識した時は、もはや後戻りはできなくなっていたのです。
どちらも悲劇ですが、祖父と叔父の陰謀により命を絶たれ、最期を看取ったのはたった一人の下僕だけだった頼家よりも、800人の家臣と共に死んでいった高時の方がまだ幸せなのかな…?
- Tag :
- 鎌倉時代
Comment
2005.11.12 Sat 13:11 | お!
テクノラティ検索でたどり着きました。
この本のレビューしてる人を見つけたのは初めてです。
この作品、ホントに読み応えありますよね。
もっと多くの人に読んでもらいたいと思ってます。
2005.11.12 Sat 22:34 | >yoshiさん
はじめまして!コメント&TBどうもありがとうございます。
>この本のレビューしてる人を見つけたのは初めてです。
ええっ、そうなんですか?賞も取ってるし、有名な作品なのかと思ってましたが、知名度低いんですかね…。
やはり鎌倉時代や登場人物が、一般に馴染みが薄いのかもしれませんが
ほんとにいい小説なので、歴史好きな方にはぜひ読んでいただきたいですね。
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鎌倉擾乱
★★★★★著者:高橋直樹 出版社:文藝春秋(文庫版あり)臆病な本性を隠し、権謀術数の末、内管領にまでのぼりつめた平頼綱の数奇な運命……。「異形の寵児」など三篇。第五回中山義秀賞受賞
- ねぶかどねざる
- 2005.11.12 13:08
